若いのに大人ぶって無理ばかりしていた恋。

大学時代にバイトで、パーティコンパニオンをしていました。企業や団体などが開く宴会に3、4人で派遣され、お酒のお相手をするのが主な仕事です。

 

とある企業の忘年会に派遣された時、彼と出会いました。彼はその企業と取引のある会社の営業部の社員で、交流や接待も兼ねてその席に呼ばれていたようでした。

 

宴会が終わりに近づく頃、その企業の社長さんと彼が話しをしているところに呼ばれて席につきました。挨拶程度のお酌ははしていましたが、ちゃんと顔をみて彼と話すのは始めてでした。もろ好み、というのが第一印象です。おそらくこの時すでに私は彼に惹かれていたのだと思います。そして彼も何故か私のことを気にかけてくれていたようでした。

 

なんとなくお互い意識しながらも、私はもちろんのこと彼もどちらかというとその社長をを接待する側の人でしたから、二人で話し込むわけにもいかない状況でした。そんな中、社長がトイレに立った隙を見て、彼が私に「俺ヤバイ、○○(私の源氏名)のこと好きになったかも」と言ってくれたのです。でもお互いお酒が入ってますし「またまた~」とか「軽いな~」とか言いながら私もごまかしていたんです。そしたら彼も「だよな、軽すぎるよな」などと言い、なんとなくうやむやになってしまいました。

 

そのまま終われば、もう二度と会うこともない人だったのですが、帰りがけに彼がこそっと自分のポケベルの番号を渡してきたのです。

 

「もし少しでも俺のこと気にかけてくれているなら鳴らして」

 

その時の彼の顔は真剣でした。

 

そこから私たちはデートをするようになりました。水族館に行ったり飲みに行ったり、彼のマンションにも遊びに行きました。でも、付き合っていたと言えるのか疑問なところです。はっきりと言葉があったわけでもないですし、彼は関係をはっきりさせることから逃げていたようなところがありました。彼は私のことを水商売のおねえちゃんだけど大学生、でも水商売なんかしてるし、という目でみていましたし、私は私で彼のことを、ずいぶん年上(8歳上でした)の大人な男性だから私なんかを本気で好きになるわけがない、遊ばれてるんだ、と思っていました。実際、彼は自分がもてるのを隠そうとしなかったですし、そんな自分と一緒にいたら私を不幸にしてしまう、と言っていました。いつまでたってもお互いに相手を信用できず、二人とも深く真剣になるのを恐れていたような気がします。

 

なのに私はどんどん彼が好きになっていきました。でも私が彼を求めだすと、彼が引いていく気配がありました。しかも彼の仕事は忙しく、大学生の私ほど時間に余裕がありません。私が会いたくて連絡しても、折り返しの電話をくれないこともありました。本当に好きなら、少しだけでも電話できるはずだと思いましたし、でもしつこくして嫌われるのを何より恐れて我慢ばかりしていました。彼を理解しているふりをし続けていたのです。

 

会っている時は楽しいのに、それ以外の時間はすべて苦しい。待ってばかりの恋でした。

 

そんな二人が長くうまくいくわけもなく、苦しさに耐えられなくなった私から「もう会わない」と伝えました。追えば逃げて、逃げれば追うような彼だったので、一時マメに連絡をくれるようになりましたが、このまま流れに任せてもまた苦しむだけだと思い、会いませんでした。

 

そしてそのまま私は大学を卒業し、就職のためにその地を離れました。

 

離れてからもすごく苦しくて、彼に会いたくて仕方がありませんでした。偶然会えるんじゃないかと、仕事が休みの日に彼の暮らす街の駅まで3時間もかけて行ったりもしました。なにやってるんだろうな、自己嫌悪になりながら。

 

でも新しい環境に慣れていくにつれて、心の中を占める彼の分量が徐々に減っていったように思います。出会いが出会いなので共通の知り合いもなく、風の噂でも彼のことを聞くことはありません。今考えると、それぐらいスパッと切れたことで、わりあい早く立ち直ることができたのかもしれません。