気付いたら英語の先生に恋をしていた私

これは今まで一度も誰にも話したことのない、私が高校2年生の頃の話です。私が通っていた高校は大学への進学率の低い高校。高校に入学した時から私も卒業したら就職をするつもりでした。

 

しかし、これまでの私の成績と生徒会役員をしてる様子から先生方からは早い時期から進学を勧める声がありました。

 

この時お世話になった英語の先生もその一人。誰に対しても優しい、柔らかい笑顔の先生でした。「でも、英語が苦手で…」そう言う私に対し、放課後にはバスケット部のコーチを任されていたにも関わらず、それからほぼ毎日放課後になると英語の特別補修をしてくれるようになりました。私のレベルに合った問題集を先生自ら自腹で購入し、どのように勉強すればいいのか1から丁寧に教えてくれる姿に「どうしてここまでしてくれるのだろう。」と不思議にさえ思いました。職員室ではさすがになかったものの、放課後の教室で一人残り勉強する私の頭を「頑張ってるね。」と初めて撫でられた時はかなり驚きました。しかし、日が経つごとに先生のその優しさにドキドキしつつ、いつしか嫌いな英語に対して自信を持てるようになってきました。きっとこの時にはすでに、私は先生に恋をしてしまっていたのだと思います。

 

問題集も6冊目に入った3月の中旬。「今日は図書室が空いてるから、図書室で補修しようか。」そう言われ放課後、図書室に行きました。普段通り補修を行い、今日の補修も終わり。私が「ありがとうございました。」と立ち上がった時、「実は今日、言わないといけないことがあってね。」先生が話し掛けてきました。「なんですか?」そう聞き返す私の傍に立つと突然、ぎゅっと抱きしめてきた先生。今までは頭を撫でられることはありましたが、抱きしめられたことはなく私の頭の中は真っ白になりました。もし廊下に人がいたらこの姿が見えていたかもしれません。そしてそのまま10秒ほど抱きしめられたまま、静かな時間が流れました。「実は俺、四月から転勤で移動になるんだ。だから今日で俺の補修もおしまい。毎日、補修頑張ったね。」「え、先生いなくなっちゃうんですか?」「うん、でも次に来る新しい先生にも補修の引継ぎはお願いするから安心してね。」そう言いながら頭を撫でる先生。

 

生徒と教師。立場が分かっているから、「好き」と自分の気持ちを告白したくても言えない私。せめて「先生がいなくなるのは寂しいです」そう言いたかった。しかし、それを言う勇気さえ私にはありませんでした。「そうなんですね、先生、いままでありがとうございました。」普段と変わらない表情で返す、私にはそれしかできませんでした。

 

帰り道、一人歩きながら押しつぶされそうなくらい苦しい胸中、その日の放課後のことを思い出して静かに泣きました。

 

一週間後、全校集会で先生の転勤が発表され、クラスメートの女の子たちが「先生、行かないでよ~!」と別れの言葉を言っていました。

 

私も冗談交じりでもいいから、どこかで「好きです」と一言いえていたら良かったのに…、そう悔いる私がいました。