大切なことに気付くことのできないまま、失ってしまった人

彼との出会いは私がまだ20代前半の頃にカフェで働いていた頃の話です。八月の暑い夏の日、いつものように働いていると店の外の看板を見ていた男性のお客様がいらっしゃったので私がお声掛けしたことが出会いのきっかけです。

 

他のお客様にもいつもしているように「良かったら店内に詳しいメニューがありますので、冷たいドリンクでも飲んで涼んでいかれませんか?」と私がお声掛けすると、彼は少し驚いて一瞬固まっていましたが「じゃあ少し休んでいこうかな。」とすぐに来店して下さりました。彼から後に聞いたことですが、その日ちょうど花火大会のイベントで浴衣を着て接客をしていた私に一目惚れをしたとの事でした。そんな事とも知らず一人のお客様として普通に接客をしていたのですが、会計の際に他愛もない会話をしていると共通点があり一気に距離が縮まったような気がしました。

 

転職のために仕事を辞めて独学でやりたいことを勉強している最中だったという彼は、勉強のためとそれから毎日のように朝から来店し夕方まで店で勉強するようになりました。私は毎日来店して下さる大切な常連様として、勉強中の彼の邪魔をしない程度にちょっとした会話をしてコミュニケーションをとるようにしていました。そんなふうに少しづつ会話も増え、気付けば彼が来店するのを毎日心待ちにしていた自分がいました。

 

そんなある日、彼といつものように少しだけ他愛もない会話をしていると一枚の紙切れを渡されたのです。そこには彼の名前と連絡先が書いてありました。私は戸惑いましたが「よかったら友達になって下さい。連絡待っています。」と彼に言われ迷った結果、友達ならいっかとその日の夜に彼に連絡をしました。それから彼から食事にいこうと誘いがあり、初めて食事に行くことになりました。そして、食事に行った帰り道に「あなたに最初に会った日に一目惚れをしました。

 

毎日、明るく働いているあなたに元気をもらいました。よかったら付き合って下さい。」と告白をされたのです。私は嬉しかった半面、その時他に好きな人がいたためにやんわりとお断りをしました。それでも彼は「友達でもいい。仕事を辞めて不安もあった自分に元気を与えてくれたあなたの何かお役に立てたら。」とまた食事などに行きましょうと言ってくれました。

 

その後、お付き合いする事はなかったものの、そうやって彼と何度か食事に行くようになりいつも励ましてくれたり相談に乗ってくれる優しく紳士な彼に気付けば心惹かれている自分がいました。彼と過ごすなんてことのない時間はとても楽しかったのです。それでも当時はそんな自分に気付く事ができず、今思えば彼を振り回してしまう行動をとってしまったりしていました。

 

そしてやっと自分の気持ちに気付いてしまった時、彼に告白をしたのです。ですが、その時には手遅れで彼からは夢に向かって集中したいと振られてしまいました。しばらくは立ち直れなかったのですが、今は新しい恋によって幸せです。それでも彼との叶わなかった恋は一生忘れることのできない思い出です。