恋愛とは求めなければ、求められない。

私が都内のデパートでお酒の販売をしていた二十代の頃、その売り場にワインの販売担当として派遣されてきた五つ年上の女性がいました。

 

一点の濁りも無い、一目惚れでした。下世話な言い方ですが、私にとっては文句のつけようのないルックスやスタイル。

 

とにかく何が何でも自分の彼女にしたい。そこまでの気持ちを持って鼓舞させられ、恋愛に対して強い感情や意思を抱いた相手は前にも先にも彼女だけです。

 

来る日も来る日も猛アピールです。そっけない態度をとられればとられるほど奮起する気持ち。

 

お互い友達を誘っての飲み会なら…と、何とか約束をとりつけた時の喜びと言ったら、もう。

 

前もって友人には自分の気持ちを話し、姑息ではありますが、上手く事が運ぶように私にアシストをしてくれるように頼みました。

 

見栄やプライドや体裁などどうでもよく、その気持ちを伝える為にとにかく彼女と二人きりになりたかったのです。

 

意外と事は上手く運び、友人は向こうの友人を引きつけてくれ、二次会は別行動することに。

 

意気揚々と肩で風を切りながらカッコつけて向かった先は、夜景の綺麗なムード抜群のバーでした。

 

とりあえず飲み直しの一杯を飲み終え、二杯目のカクテルを三分の二ほど飲んだところで自分の気持ちを伝えました。

 

すんなりOKでした。そんな状況に呆気にとられ気味の私に彼女が言った言葉。「実は最初に会った時から私も…。」

 

その時ばかりは神様の存在を信じ、感謝しましたね。生きていればいい事あるものだと。

 

それからは、彼女の部屋で半同棲状態。そんな日々は二年続き、ある日突然、私の仕事の都合で勤務が地方に決まり、私達は遠距離状態になりました。

 

それでも、お互い時間を設け付き合いを続けました。

 

一年半過ぎた頃、彼女の実家へ御挨拶に行くことに。

 

剣道の師範であるお父様の厳格な外見に一瞬圧倒されかけましたが、なんとか向こうのご両親も温かく私を迎えいれてくれ、また、将来の結婚についても承諾をいただきました。

 

私はひとつ、大きな目的を果たしたような気持ちで満たされました。

 

それが、いけなかったのかも知れません。完全に彼女を自分の中に引き込める状況を手に入れた現実に満足してしまったのでしょう。

 

それから自然と私の気持ちは離れてしまい、それでも付き合いを続けていたある日。

 

彼女から、「他に好きな人ができた」と。

 

その時はショックでした。引きとどめる言葉を掛けたりもしましたが、状況は変わらず結局はそれっきりです。

 

あれから時間は経ち、思い出の中の彼女を超えた歳になった自分。

 

知らず知らずのうちに彼女を自分から遠ざけ、そしてなるべくしてなった結果であることが痛いほど分かりました。

 

求めなければ、求められない。それが「恋愛」です。